そらくんとの11年。
11年前の6月、キミはココに来てくれたね。
あれから11年後、キミは旅立った。
父からの私への11歳の誕生日プレゼントに来てくれたキミ。人生で1番素敵な大切な誕生日プレゼントだ。
11歳と3ヶ月。あっという間だった。
私が帰るその日の朝にキミは旅立った。私が離陸するその瞬間に旅立った。
2017年7月1日AM9:40。
まるで待ってくれていたみたいに。ずっとずっと私のことをお姉ちゃんみたいに支えてくれたね。友達のように遊んでくれたね。どこにいくにも何をするにも一緒だったね。いつも弱いところは見せてくれなかった。私にはいつも強がっていたね。最後の最後までキミは私に弱いところをみせてくれなくて。
キミと最後の会話は元気な時だった。
元気に走り回って。
遊んで遊んでってボールをもってきたり。
ご飯を食べてると横からくれくれって催促にきたり。
散歩に振り回されたり。
一緒に高尾山に登ったり。
夏は海でヤドカリと遊んだり。
冬は積もった雪で遊んだり。
私とキミとの思い出には元気な時のキミしかいない。ずるい。ずるいよ。勝手に先に逝って。お別れも言わせてくれなかった。でも、私が泣き虫なことを知ってるキミは笑顔のままの記憶で終わらせてくれたのかな。それもキミなりの優しさなのかな。温かいキミと会ったら生きようとしているキミの前で絶対に泣いてしまっていたから。
家に帰ると、「ただいま」の声にかけよってくるキミはいなくて。尻尾を振って待っているキミはいなくて。残されたのは、キミが使っていたボール。ベッド。お茶碗。布団。周りを見渡したらキミのためのものでいっぱいだった。もう使ってくれないの?ねえ。帰って最初に見たキミはもう硬くなっていた。骨ばっていて痩せこけていた。あんなに丸々と太っていたのに痩せて脂肪はおろか、筋肉も落ちていた。
それでも、まるでいつもみたいにスヤスヤ寝てる顔なんだ。いびきをかいてそうな顔なんだ。ちょっかいを出したら目だけ開けてうっとうしそうに、手ではらいそうな、そんなキミだった。
いつもみたいにキミの名前を呼んだのに動かなくて。私がつけたキミの名前。その名前を呼ぶ私の声は無意識に震えていて、泣いていた。キミの前で涙をあんなにみせてごめんね。笑顔をたくさんくれたキミなのにたくさん涙をながしてごめんね。笑顔でお別れできなくてごめんね。
朝起きても、部屋を軽快に歩く音はしなくて。あるのは、布団にくるまれて、そこで眠っている冷たいキミだけだった。
さぶがりだから、寝るときはいつも布団に全身入っていたキミ。
保冷剤で冷たくしてごめんね。キミの手を握って寝ていたけれど、冷たく硬いその手が嘘みたいで。でもそれは本物のキミで。
頑固だけど、従順だったキミ。親孝行をしっかりしていったキミ。ママも褒めていたよ。寒いと震えてストーブつけてって顔をしてきたり、散歩に行って、うんちが柔らかくてお尻について気持ち悪いと取ってあげないと、座って動かなくなったり、自分で草むらに入っていったのに枝が手について邪魔で動けなくなったり、なにからなにまで、世話のかかる子だったけど、それでも誰よりもかわいい長男でした。最後まできれいな状態で綺麗な顔で迷惑をかけずに旅立ったね。自慢のうちの長男だよ。
大好きだったお散歩。最後にしっかり自分の力で数歩だけどやり遂げたって聞きました。最高にかっこいいね。いい子だね。
食べることが大好きだったね。最後はしんどくて食べても吐いてしまう。そんな自分が嫌だったキミ。美味しくないご飯を無理やり食べて、少しでも長い間頑張ってくれてありがとう。
「ばいばい」が大嫌いだったね。お留守番が大嫌いだった。大嫌いな言葉なのに、最後お別れの時「ばいばい」って言ってしまった。「またね」「待っててね」って言えばよかったね。ごめんね。触られるのは嫌いなのにいつも近くにいてくれたね。いることが当たり前だったキミが家にいなくなったその時、家があまりにも静かで、自分があまりにも無力で。私の泣く声が部屋に響いて。そんな私をなぐさめてくれるキミはもうそこにいなくて。いつも近くにいてくれた温かさに改めて気付かされた。ありがとう。
死期を悟ったキミは、大好きな家族の前で大好きなママの腕の中で旅立った。すぐ転んでしまう体で最後の力を振り絞って必死に立って、ママのいる方に向かって歩き、死を迎えたキミ。幸せだったかな。
いつも、家族で旅行に行くにしてもキミといけるところ。キミと一緒に時間をすごせるところ。私の条件はそれだけだった。もうそれも考えなくてよくなるんだね。さみしいな。少しぐらい考えさせてよ。キミ主体の時間をまた過ごさせてよ。
出会ったのは小学5年生の私と生後3ヶ月のキミ。11年で、大学4年生の私と11歳のキミにいつの間にかなっていた。
楽しかったかな?私は楽しかったよ。この11年。キミがいてくれたおかげですっごく楽しかった。
出会った時は、ケージから脱走したり、リビングの椅子を齧ったり、障子をやぶったり。家から脱走した日もあったね。急いで探しに行ったらいつもの散歩コースで優雅におしっこをしてたね。散歩から帰らないって喧嘩した日もあったね。愚痴を聞いてくれた日もあったね。はしゃぎすぎて、歯が当たって私の手が流血して怒った日もあったね。ダニがついて大騒ぎした日もあったね。バレンタインに私が作ってたワッフル、目を離した隙に全部食べたこともあったね。焼き芋を盗み食いしたこともあったね。自家製パンが大好きなのに、パン焼き器がパンをこねる音が嫌いだったね。毎日、お肉と野菜の炊いたご飯を美味しそうに食べてたね。誰も取らないからゆっくり食べなって言っても美味しそうに急いで食べてたね。ご飯の時は、椅子にのぼってくるから、こっそりご飯をあげたね。美味しかった?
ビビリだから、田んぼから出てきたカエルにこわがってたね。ちゃかしたら怒ってたね。
3月11日生まれのキミは、4歳の誕生日が大きな揺れを観測したあの日たった。家でひとりだったね。そばにいれなくてごめんね。
10歳の誕生日には特製お芋ケーキを作ってもらってたね。
11歳の誕生日には一緒に旅行に行って祝杯あげたね。
ベランダや部屋から外を見るのが好きだったキミは庭に来る鳥たちを楽しそうに見ていたね。
庭で栽培していた野菜を食べていくから、私たちの分の収穫がなかったね。
庭から戻ってきたくないキミと早く家にいれたい私で何度も庭で追いかけっこしたね。
晴れた日には自転車に乗って、おでかけもたくさんしたね。
水が嫌いだからお風呂場でキミを洗いながら何度も喧嘩したね。キャンプに行って焼肉を一緒に食べたね。
夏の暑い日は扇風機をまわしながら一緒に寝たね。
冬の寒い日は暖房の前で一緒に温かい紅茶を飲んだね。
車に乗ると窓開けろってうるさかったね。窓を開けたら風を楽しそうに切ってたね。
部屋が真っ暗になるぐらい帰りが遅いと怒っていたね。その日のお散歩は長かったね。いつも隣で寝てくれているだけで癒されていたよ。助けられていたよ。キミを抱っこするだけで心が落ち着いたんだよ。帰省する時、母が「みさ帰ってくるよ」って言うと玄関まで走って行って、お座りして待っててくれたね。実際に帰るとベタベタな私をうっとうしそうにするけど、隠れてかわいいことしてるの知ってたよ。
キミと過ごした時間は小さなことも、全部全部大切な想い出。ずっとずっと心にしまっておくね。
キミは気づいていないだろうけど、たくさんの人に愛されていたんだよ。私たち家族はもちろん、おばあちゃん、従兄弟、私の友人、母の友人。沢山の人からメッセージをもらっていました。皆、ありがとう。「頑張れ」って励ましてもらってたんだよ。たくさんの人から愛情をもらえていて飼い主として、私は嬉しかった。
聞いていますか?聞こえていますか?
11年間、幸せでしたか?
うちの家でよかったですか?
いつも隣にいてくれてありがとう。これからも私の心の中にいてください。キミの分まで強く生きます。夢で会おうね。何年先になるかわからないけどまた会おうね。いつでもまた会いに来てね。また遊ぼうね。
大切な時間をありがとう。キミの全てが宝物です。
キミの名前をまた呼ばせてね、そらくん。
嗚呼、大きな声で今呼んだら走ってきてくれそうな気がするよ、そら。
ありがとう、そらくん。
お疲れさま、そらくん。
ゆっくり休んでね。ありがとう。
2017.07.02 みさ